こんにちはMPCの外山です。

このメルマガの冒頭で度々アメリカの大統領候補の”パンチがある人”のことを
書いていますが、この前来日していたフィリピンの大統領もパンチがある人です。

イギリスのときもそうでしたが、一見分かりやすいようなことを主張している人たちが
リーダーに選ばれることが多いようです。

ただ、それが良いことなのかというと…???です。

さて、今週のテーマは「コストリーダーシップ戦略」です。
経営学の教科書には必ず出てくる戦略なので、覚えておいて損はないと思います。
ということで、今週の解説です。

【コストリーダーシップ戦略って何?】

まずは、コストリーダーシップ戦略って何?という話ですが、
簡単に説明すると…。

「売上シェアを増やして(=規模を大きくして)、スケールメリットを出してコストを下げて儲けましょう」
という戦略です。私はこれを別名”量の戦略”と呼んでいます。

1980年頃までは主流の戦略だったようで、大手の企業はここを目指して
規模を拡大させていました。(それもあって売上至上主義が生まれるわけですが…)

今でも化学とか鉄鋼とか重工業系の会社はこれが基本路線だと思っています。
(だから、あの業界は大手同士が合併したりします)

で、ポイントは”スケールメリットを出してコストを下げる”という部分です。
この辺りの理屈がちょっとややこしいので解説していきます。

今回の戦略をとらない場合でも、コスト削減の基本となる理屈なので
頭の中に入れておいて損はないかと思います。

【スケールメリットが出るとコストが下がる理屈】

前回事例が自動車なので、解説も自動車の例でいきましょう。

自動車を作るためにはその材料や部品が必要です。
まず、これを買ってくるのにコストが掛かります。これを”材料費”とします。
車1台作るのに50万円/台ぐらい掛かるとしましょう。

自動車を作るためには設備が必要ですね。今後の説明の都合上、設備は月額リースで
借りてきたとしましょう。これを”設備費”とします。
これは、月額30万円ぐらい掛かるとします。

あと、作ってくれる人が必要ですね。”人件費”とします。
とりあえず、月給20万円の人を5人雇うとしましょう。人件費は月100万円です。

さて、ここで注意ですが、材料費は車を1台作るたびに発生しますが、
設備費と人件費は月額固定です。要は、材料費は1台作れば50万円、2台作ったら100万円に
なりますが、設備費と人件費は1台作っても2台作っても変わりません。
そして、この場合の材料費のことを”変動費”。設備費と人件費を”固定費”と言います。

で、車の注文が10台あったとするとトータルで掛かるコストは…

変動費(材料費):50万円×10=500万円
固定費(設備・人件費):130万円
合計:630万円です。

これを1台当りに直すと630万円÷10台=63万円です。

もし、車の注文が20台に増えると…

変動費(材料費):50万円×20=1,000万円
固定費(設備・人件費):130万円
合計:1,130万円です。

1台当りに直すと1,130万円÷20=56.5万円になります。

受注量が増えるだけで勝手にコストが下がりました。
これ、なぜ下がったかと言うと、1台当りの固定費の部分が下がったからです。
10台の場合は、130万円÷10=13万円だったものが、20台のときは130万円÷20=6.5万円になりました。
(このことを私は「固定費が薄まる」と言っています)

これが、スケールメリットです。ちなみに、別の言い方では”量産効果”とか”規模の経済性”と言ったりも
しますが、同じことです。

あと、「変動費は下がらないの?」と思われるかもしれませんが、こちらも下がります。
ただ、変動費に関しては仕入先さんとの交渉が必要です。

「発注数増えたからコストさがるよね?」とか「コスト下げてくれたら発注増やすよ」と言って
交渉して値下げをしてもらえば変動費も下がります。
(私がバイヤー時代にやっていた常套手段です)

【売上シェアが必要な理由】

スケールメリットを出すためには、たくさん受注を確保しないといけません。
逆に言えば、受注を確保すればするほど、コストは下がるのでさらに価格を下げるなりして
さらにシェアを伸ばすことが出来るようになります。

だから、この戦略を採っている会社はとにかく売上(受注数)にこだわります。
それが生命線なので当然です。

ということは、当然売上シェアがトップの企業がこの戦略の一番の成功者になれるわけです。
仮に業界全体が同じ戦略を採っていたとしたら、トップ企業が業界で1人勝ち出来ます。
「コストが下がる⇔シェアが増える→利益が上がる」ってなるので、一旦地位が確立出来れば
ウハウハです。

【コストリーダーシップ戦略を採るための条件】

市場シェアとコストで勝負するコストリーダーシップ戦略ですが、これを実践するためには
中々高い壁が存在します。クリアしないといけない条件を書いていきます。

条件1 高い営業力

多くの受注を確保するためには、前提として当然ながら高い営業力が必要です。

条件2 高い生産性

「受注量を増やしてコスト下げるぞ!」って言っても、受注量と同じ割合で固定費も増やして
いたらスケールメリットは出ません。受注量が2倍になったかといって固定費も2倍に
していたらコストは下がりません。

スケールメリットを出すためには「受注量の増加率>固定費の増加率」にしておかないといけません。

となってくると、仕事の効率を上げて、人や設備の生産性を上げないと駄目です。

条件3 豊富な資金

生産性を上げるにせよ、営業力を高めるにせよ資金は必要です。
また、市場シェアを取るためには「利益」よりも「受注量」を優先しなければならない
場合もあるため、赤字になることもあります。そのときに赤字に耐えられるだけの
体力=資金が必要になります。

【コストリーダーシップ戦略を採る企業の今後の展開】

さて、今回紹介したコストリーダーシップ戦略ですが、今後この戦略を採る企業は
これまでやらなかったような大胆な方策を打ち出してくる可能性があります。

なぜなら、昔と比べて「右肩上がり」の市場がなくなっているため、
これまでのやり方のままだといずれ戦略が成り立たなくなるからです。

そのためにどんな手を打ってくるのか、ちょっと思いつくものを書いていきます。

1 業務提携・業界再編

まず、これはやるでしょう。(というかすでに進行中ですが…)
トヨタとスズキのように業務提携をしたり、新日鉄と住金のように合併したり…。

これをやると提携先の顧客が手に入ります。要は、単独でやるよりも仕事のボリュームが
増えて、スケールメリットを出しやすくなるってことです。

で!これ大切なことですが、これを「大手は大変だね~」って人ごとのように見てたら駄目ですよ。
大手同士が再編するってことは、そこと取引している企業も再編の対象になるってことです。

例えば、これまでトヨタとスズキで別々の仕入先から購入していた部品を1社に集中させるって
こともあり得るわけです。これ、残る側になればいいですが、そうではなかったら大変です。

2 部品の共通化

物語のところで紹介したように、部品を共通化させることも戦略的にどんどんやってきます。
出来る限り同じものをまとめて作ったほうが効率はいいですからね。

「見た目はスズキだけど、中身はトヨタ」とか「スズキ車なのにトヨタ車と一緒にリコールになった」
という現象は今後も増えていくと思います。

3 戦略の見直し

あと、戦略を根本的に見直す企業も出てくると思います。

要は「大量に受注して大量に作る」っていうビジネスモデルを見直して、
「うちはこれからプレミアムブランド作ってお金持ちにし売らないよ~」ってしてみたり、
「もう”モノ”だけじゃ儲からないから”サービス”で稼ぐようにします」ってしてみたりって
ことをするかもしれないってことです。

これも、自分の会社の取引先が戦略を見直したときに
「あ~、商売のやり方変えたんですか~。そうですか~」ってボーっと見ていたら駄目ですよ。

戦略を見直すってことは、関係する仕入先などに求めるものも変わってくるってことです。
今まで通用していたやり方や商品が通用しなくなるかもしれないってことです。

正直なところ今回紹介したコストリーダーシップ戦略は中小企業の会社さんで採ろうとしても
中々難しいかもしれません。

ただ、取引をしている会社はこの戦略を採っているかもしれません。取引先がどんな戦略を
採っているかを知ることは自分の会社の戦略を決める上で非常に重要なことなので、
今回紹介させてもらいました。

ということで、今回はここまで。
次回はコストリーダーシップ戦略と並んでもう一つ有名な戦略「差別化戦略」について書いて
いこうと思います。

では・・・。

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